みなさん糖質制限という言葉は聞いたことがありますか?ダイエット方法の中でもよく知られた方法の一つです。糖質を減らすことで体重を減らせる効果がありますが、始める前にそのメリットとデメリットをしっかり理解することが大切です。この記事では、糖質制限のメリットとデメリットについて分かりやすく解説します。
本記事で分かること
- 糖質制限ダイエットってどんなダイエット?
- 糖質制限ダイエットのメリット
- 糖質制限ダイエットのデメリット
- 糖質制限ダイエットはどんな人に向いているの?
- 糖質制限ダイエットまとめ
糖質制限ってどんなダイエット?
糖質制限ダイエットとはその名の通り、糖質を含む食材を摂取しないダイエット方法のことです。特徴としては短期間で痩せられることで、人によっては1週間でー○kgなど比較的体重が落ちやすいダイエット方法でもあります。
一般的には糖質(炭水化物)を総食事量の20%~45%になっているものを低炭水化物食と呼び、20%以下のものを超低炭水化物食またはケトジェニックと呼びます。
今回の記事では糖質と表現していますが、糖質は炭水化物に主に含まれますので低糖質=低炭水化物と捉えてください。
ではなぜ糖質を制限すると体重が落ちるのかを解説していきます。
糖質を制限することで体重が落ちるメカニズム
まずは糖質の役割から説明していきます。
①単糖類 ②二糖類 ③糖アルコール ④オリゴ糖 ⑤多糖類
糖質は基本的には上記の5種類に分類されます。糖質は主に細胞内のミトコンドリアと言われる場所でエネルギー産生を行います。その過程を解糖系代謝と呼び、その結果ATP(アデノシン三リン酸)と呼ばれるエネルギーを作ることができます。
この解糖系は産生するスピードが速いため、素早い運動や頭をフル回転させる時などによく使っているエネルギー産生方法です。
しかし体に糖質がない状態では脳や臓器がうまく機能できなくなってしまいます。そのような場合は肝臓で脂肪や筋肉を材料として新しく糖質を作るようになります。(糖新生)この糖新生の機能を利用して減量を行う方法が糖質制限ダイエットです。糖質摂取量が減少することで体は脂質を主なエネルギー源として使用することになります。また糖質の一つであるグルコースは、水分と結合しやすいという特徴があり、糖質を制限すると体内の水分量も減少することで体重減少に繋がりやすいです。
まとめると、意図的に糖質を制限することで肝臓が脂肪や筋肉を材料にエネルギーを作るようになるため脂肪や筋肉量が減り、体重減少に繋がります。
次にこの方法についてメリット・デメリットを解説していきます。
糖質ダイエットのメリット
①効果が短期的に出やすい
糖質制限ダイエットは肝臓による糖新生によるダイエット方法のため、自分自身の体をエネルギー源として消費しながら体重が落ちていきます。そのため他のダイエット方法と比較して短期間で効果が認められます。「どうしても短期間で体重を落とさなければならない」や「長期間のダイエットはしんどい」と思う方は向いているかもしれません。またボティメイクや厳重な体重管理をしなければならない方に対しても有効であると考えられます。
②血糖値が原因である不調が改善する
食事をすると摂取した糖質は消化・吸収され、全身の血管に血糖として行き渡ります。血糖は数が多くなりすぎないようにインスリンというホルモンで調整されています。しかし過剰な糖質摂取により一時的に血糖値が上昇してしまうと、血糖値を抑えようとしてインシュリンも過剰に分泌されてしまい、逆に過度に血糖値が低下してしまう場合があります。このように異常な血糖値の上がり下がりが眠気・疲労感・集中力低下・イライラなどの原因になっています。そういった方が糖質制限をすることで血糖値の異常な上昇を防ぎ、身体の不調の改善につながる可能性があります。
糖質ダイエットのデメリット
①長期的な効果がはっきり分かっていない
糖質ダイエットの効果に対する研究は今まで数多く行われてきましたが、糖質を制限することが良いか悪いかは現在でも意見が分かれています。最近では2024年に米国糖尿病学会や英国糖尿病学会が糖尿病に対する糖質制限食をガイドラインに掲載していますが、糖質制限時期に関しては約2年間までと短期間で行うことを推奨しています。これは根拠となっている論文や研究が2年間しかなかったのも要因ではありますが、それだけ長期的な研究が少なく科学的な根拠が少ないということです。短期間であれば問題ない場合が多いでしょうが、長期間行う場合は低血糖症状や自律神経症状の悪化に注意が必要です。
また、海外では糖質制限をしたグループと脂質制限をしたグループを対象に体重や血糖値の増減を比較した研究があります。それによると約2年間は糖質制限グループが成績が良好だったがそれ以降は両者とも大きく成績は変わらなかった。つまり糖質制限の効果は長期化するほどに効果が薄れていたと述べている。他にも同様の研究があり、糖質制限をすることにより疲労感や甲状腺機能の低下を引き起こすなどの報告もありました。
②リバウンドしやすい
新陳代謝において糖質は糖代謝と呼ばれる重要なエネルギー産生の役割を担っています。この糖代謝は糖質が不足している状態が続くと、エネルギー産生効率が低下してうまくエネルギーを作れなくなります。人は何もしなくても身体の細胞を活性化し新陳代謝を行うようにできています。このことを基礎代謝といいます。基礎代謝は糖質代謝とも深く関わりがあることも知られており、糖質代謝能力の低下に伴い、基礎代謝能力が低下してしまいます。それにより消費カロリーが低下することで糖質の摂取量が増加した場合に太りやすくなってしまいます。
糖質制限ダイエットはどんな人に向いているの?
これまで糖質制限について解説してきました。糖質制限の特徴として①短期的な効果が出やすい②食事後の不調が改善しやすい③長期的な効果は懐疑的。という大きく3つ挙げられます。ではこの糖質制限ダイエットはどんな人に向いているのか解説していきます。
- 食後に眠気や倦怠感が強い人
- ここ最近寝不足や不眠で悩んでいる人
- 小麦製品など炭水化物を過剰に摂取している人
- 糖尿病による食事制限が必要な人
糖質制限ダイエットまとめ
これまで糖質制限に関するさまざまな研究や論文が発表されてきましたが、現在でも賛否が分かれているのが現状です。糖質制限は短期的な減量効果が多いに期待されるため短期的に痩せたい方やスポーツなどでの減量がある方には良いダイエット方法だと思います。しかし長期的にはデメリットも多くなるため、期間には十分注意しながら取り組む必要があります。

引用
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